【あらすじ・ネタバレ・感想】『続・座頭市物語』(大映/1962年)

こんにちは、館主のおのまとぺでございます。

今回は座頭市シリーズ第2作『続・座頭市物語』をご紹介します。 主演の勝新太郎と実兄である城健三郎(若山富三郎)の兄弟共演です。

作品情報

  • 公開日:1962年10月12日
  • 上映時間:73分
  • 配給:大映
  • 洋題:『The Tale of Zatoichi Continues』

あらすじ

かつて心ならずも平手神酒を斬った座頭市は、彼の一周忌で再び笹川に向かっていた。 その途上で宿屋から按摩の仕事の依頼を受け部屋へ上がると、その客は黒田家の殿様であった。 しかし、この殿様は精神に異常をきたしていた。 その事実が広まることを恐れ、黒田家は口封じのため座頭市を亡き者にしようとする。

座頭市は立ち寄った飯屋で飯盛女のお節と出会った。 この女はかつて市がほれ込んだ女・お千代にそっくりだった。 市は自分が黒田家から追われていることを聞く。

その後同じ飯屋に隻腕の剣士がやってくる。 お節はこの男にとってもまたほれ込んだ女にそっくりだった。 名前も同じお千代といった。 市とこの男が言葉を交わすことはなかったが、なにやら深い因縁のある様子であった。

黒田家は関の勘兵衛にも市の殺害を依頼し、市は双方から追われる身となってしまう。 お節が匿ったことで難を逃れたかに思えたが、これも露見してしまい勘兵衛の手下がお節の家へとやってくる。 市はこれを退け、お節と別れて笹川へと向かう。

しかし、市のもとには引き続き関の勘兵衛の追手がせまっていた。 また隻腕の剣士も因縁あって市の前に立ちはだかるのだった。

スタッフ

  • 企画:久保寺生郎
  • 原作:子母沢寛
  • 脚本:犬塚稔
  • 監督:森一生
  • 撮影:本多省三
  • 録音:林土太郎
  • 音楽:斎藤一郎
  • 美術:太田誠一
  • 照明:伊藤貞一
  • 編集:谷口登司夫
  • スチール:浅田延之助
  • 助監督:井上昭
  • 製作主任:大管実

登場人物

  • 座頭市(勝新太郎):盲目の旅按摩。 見た目は26,7歳。 前作で心ならずも斬ってしまった剣士・平手神酒の一周忌で笹川へ向かう途中、飯岡に立ち寄った。
  • お節(水谷良重):23歳。市と与四郎の二人が惚れた女・お千代に瓜二つの飯盛り女。 座頭市を探しに来た本陣の侍や勘兵衛の手下から匿った。
  • 渚の与四郎(城健三郎(若山富三郎)):浪人風の隻腕の剣士。 座頭市との間には浅からぬ因縁がある。
  • 鏡の三蔵(中村豊):与四郎の相棒。
  • おたね(万里昌代):前作で座頭市と思い合っていた女。 飯岡助五郎の策略を知り座頭市に伝える。
  • 関の勘兵衛(沢村宗之助):宿場町の親分。 黒田越前守の家老から依頼を受け座頭市を始末するため手下を動かす。
  • 飯岡助五郎(柳永二郎):飯岡の親分。 前作で座頭市は助五郎の許に草鞋を脱いでいた。
  • 民五郎(杉山昌三九)
  • 吉田甲斐(嵐三右衛門)
  • 黒田越前守(春本富士夫)
  • 弥平(山路義人)
  • 勘造(水原浩一)
  • 森助(伊達三郎)
  • 白石左門(南条新太郎)
  • 柏屋五右衛門(南部彰三)
  • 金兵衛(浅尾奥山)

解説・感想

本作は『座頭市物語(1962)』のヒットを受けて急きょ製作され、第1作のたった半年後に公開されました。 それもあってか上映時間も短く、少々物足りない感じもしました。 掘り下げたら魅力的になりそうな渚の与四郎というキャラクターを活かしきれていなかったのは大変勿体ないです。

活かしきれなかった印象の兄弟共演

本作で渚の与四郎を演じているのは城健三郎という俳優ですが、これは東映から移籍した若山富三郎さんの当時の芸名です。 また本作が大映移籍後の第一作となりました。

若山富三郎さんといえば、主演の勝新太郎さんの実兄で言わずと知れた名優です。 ヤクザものでは無類の存在感を放ち、子連れ狼では尋常ではない身体能力の高さを活かした派手な立ち回りが見どころの一つでした。

そんな若かりし頃の若山さんと泣く子も黙る殺陣巧者の勝さんの共演とあっては、どんなすさまじい殺陣が繰り広げられるのかと期待せずにはいられませんでしたが、与四郎は隻腕、座頭市は盲目という設定だったためかあまり派手な立ち回りはありません。 これは非常に残念でした。

しかし、市の寝こみを襲おうとするやくざ者たちを撃退したのち、クルッと刀を回してさやに納める所作など細かいところに

ラストでは兄弟そろって水に飛び込むシーンがあります。 泳いでいるところを水中から撮影しているシーンについては本人かどうか判別がつきませんが、その直前の橋から飛び込むシーンについては本人と思われます。 またこの橋から飛び込むところについても、与四郎が飛び込んだ時に水しぶきが飛んでいないので、実際には画面外にあるクッションか何かに飛び降りているのだと思いますが、結構な高さから飛び降りています。 クライマックスの見どころの一つです。

按摩の位について

飯屋のシーンでお節の父親が盲目であったという話が出てきます。 その時座頭市のセリフに検校という単語が出てきます。 これは盲目の按摩師の階級でした。 なかでも検校はかなり高い地位だったのであの様なセリフになったと思われます。 かつては琵琶法師に与えられた階位で検校、別当、勾当、座頭といった位階があったそうです。 勝さんの出世作『不知火検校』はその名の通り検校のお話です。 この辺りを知っておくと面白みが増すかもしれません。

『座頭市物語』の後日談として

単体の作品としては傑出したものではありませんが、第一作の『座頭市物語』と一緒に楽しむと魅力が増す作品です。 市には『平手神酒の一周忌』という旅の目的がありますし、おたねや助五郎など前作の重要なキャラクターも本作に登場し、ただのおまけではなくしっかりとストーリーに絡んでいます。

また、前作のラストで座頭市は刀を寺に預けたわけですが、本作の最初に仕込み杖を持っていないところを見ると誓いの通り一年間剣を握らなかったのかと思えます。 しかし、その後の宿場町のシーンでは仕込み杖をもっているのでいつの間に調達したんだろう、という疑問は湧きますね。

おそらくこの作品に興味を持たれる方は『座頭市物語』を見ている方がほとんどだと思いますので、 2本セットにして考えれば間違いなく楽しめる映画だと思います。


※ここからネタバレあり

先にも触れましたが、現実の兄弟共演であり劇中でも兄弟という非常に面白い設定です。 もうちょっとこの兄弟のやり取りを見たかったですね。 二人の対決ももっと見たかったところです。 調べてみるとこの二人は他の作品でも結構共演がある様です。 おいおいチェックしていこうと思います。

ラストに助五郎を斬って終わりますが、あの座頭市が殺意むき出しで切り捨てる様が印象的でした。 一瞬で切り捨てて、映画もそこでスパっと終わるというこのエンディングは秀逸です。

また、本作での市は水と縁があり、最初の船のシーンで観客に『座頭市って泳げるんだ』と思わせて、ラストでその伏線を回収するという造りになっています。 いきなりラストで市が泳いだらご都合展開だと思われてしまいそうですが、劇中序盤であらかじめ泳げることを示しているので納得がいきます。 余談ですが、市と与四郎が泳ぐ映像から水面に写る無数の提灯に切り替わっていく場面転換が見事です。

それでは、またお会いしましょう。

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