【あらすじ・ネタバレ・感想】『水戸黄門』(東映/1957年)

こんにちは、館主のおのまとぺでございます。

今回は日本で知らぬ者のいない水戸のご隠居・水戸光圀公の活躍を描いた東映時代劇『水戸黄門』(1957年版)のご紹介です。

作品情報

  • 公開日:1957年8月11日
  • 上映時間:98分
  • 制作:東映京都撮影所
  • 配給:東映

あらすじ

お供の助さん格さんを連れて諸国漫遊中の水戸黄門は、天下の悪法『生類憐みの令』によって江戸近郊の農民が苦しめられる姿を目にした。 水戸黄門は犬の生皮を剥ぎ、これを将軍綱吉に送り付けることでこの令を撤回させる。 その途中、街中で江戸で高田藩のお家騒動を耳にする。 高田藩の筆頭家老・小栗美作が、石高を横領しつつ、実子を藩主と養子縁組することでお家の乗っ取りを企んでいたのだ。 同じ高田藩の萩田主馬はこの旨を良しとせずお上に訴願したものの、小栗が老中・柳沢吉保に賄賂や美女を贈ることで取り入っていたため、逆に荻田が遠島のお沙汰を受けてしまう。 高田藩の剣士・関根弥次郎は荻田の指示によって水戸黄門に助けを求める為に水戸を訪れたものの、旅に出た後で会うことができなかった。 江戸に到着後小栗一派の襲撃を受けるも生き延び、スリの宇之吉の助けで水戸黄門に会うことに成功する。 水戸黄門一行は弥次郎や宇之吉のスリ仲間の力を借りて小栗の野望を打ち砕き政道を正すため動きだすのだった。

スタッフ

  • 監督:佐々木康
  • 製作:大川博
  • 原作:直木三十五
  • 脚色:比佐芳武
  • 企画:玉木潤一郎、マキノ光雄、大森康正
  • 撮影:吉田貞次
  • 音楽:万城目正
  • 美術:鈴木孝俊
  • 編集:宮本信太郎
  • 録音:石原貞光
  • 照明:山根秀一
  • 進行主任:池田利次
  • 色彩考証:和田三造
  • 衣裳考証:甲斐庄楠音

キャスト

  • 水戸黄門:月形龍之介
  • 佐々木助三郎:東千代之介
  • 渥美格之進:大川橋蔵
  • お六:千原しのぶ
  • お縫:長谷川裕見子 
  • お吟:若水美子
  • お琴:桜町弘子
  • おたきの方:花柳小菊
  • 榊原縫之助:伏見扇太郎
  • 島木新三郎:尾上鯉之助
  • 伝七:片岡栄二郎
  • 葉山庄之助:原健策
  • 藤井紋太夫:加賀邦男
  • 根田八郎太:吉田義夫
  • 彦坂長太夫:高松錦之助
  • お千賀:吉田江利子
  • お桂:七条由漓子
  • 墨染太夫:竹原秀子
  • お杉:松浦築枝
  • 桂昌院:入江たか子
  • 田川大六:横山エンタツ
  • 山辺但馬:小柴幹治
  • 小谷主膳:沢田清
  • 塚口忠太夫:百々木直
  • 吾作:団徳麿
  • 権次:時田一男
  • 中川玄春:月形哲之介
  • 阿部豊後守:河部五郎
  • 平岩左内:高木新平
  • 隆光:水野浩
  • 古垣藤九郎:上代悠司
  • 黒田彦兵衛:大文字秀介
  • 吾兵衛:尾上華丈
  • 三斎:中野雅晴
  • 市助:船津高也
  • 石崎勘兵衛:加藤浩
  • 冬木武兵衛:河村満和
  • 助松:石丸勝也
  • 春元次郎左衛門:中村時之介
  • 佐次兵衛:有馬宏治
  • 結城助九郎:青柳竜太郎
  • 金兵衛:杉狂児
  • 酒井忠清:八代目坂東三津五郎
  • 柳沢出羽守:進藤英太郎
  • 小栗美作:薄田研二
  • 萩田主馬:大河内傳次郎
  • 関根弥次郎:市川右太衛門
  • 宇之吉:萬屋錦之介
  • 野中主水:大友柳太朗
  • 将軍綱吉:片岡千恵蔵

解説・感想

勧善懲悪世直し時代劇ですので、構えることなく安心して観られます。 月形龍之介さんの黄門様は始終穏やかで、また東千代之介さんと大川橋蔵さんによる助さん格さんは現代から見てもイケメンです。

しかし、とんでもないキャストですね。 上記の三人に加え、後述する七剣聖のうちの四人、若かりし頃の萬屋錦之助さんなど正にオールスターキャストといえる陣容でした。 『次郎長富士』が1950年代大映時代劇のオールスター映画なら、これが同年代の東映時代劇のオールスター映画といえるのではないでしょうか。

内容的には若干ご都合なところもありますが、それも水戸黄門のお約束といえるかもしれません。 ただ、登場人物の名前が難しいのでそこはぼーっとしていると老いていかれてしまうかもしれません。

七剣聖の殺陣の凄み

本作には七剣聖に数えられた時代劇の名優が4人も主演されています。 月形龍之介さん、大河内傅次郎さん、市川右太衛門さん、片岡千恵蔵さんです。(これに嵐寛寿郎さん、阪東妻三郎さん、長谷川一夫さんを加えて七剣聖と呼ばれていました。) 残念ながら大河内傅次郎さんと片岡千恵蔵さんの殺陣のシーンはありませんが、ほかの二人は殺陣を披露しています。 月形龍之介さんの鋭い杖さばき、そして市川右太衛門さんの勢いとスピード感あふれるすさまじい殺陣、これらがラストで一気に展開されます。 これは大きな見どころです。

特に市川右太衛門さんの360度を相手にした立ち回りはお見事。 後ろから来た相手に完璧なタイミングで一太刀を入れます。 結構な殺陣の巧者でも、後ろから切りかかって来た相手がタイミングを合わせるため不自然な間を取ったり、敵役が剣を振りかぶったまま何故か振り下ろさずに斬られたりすることも度々ありますが、市川右太衛門さんの殺陣ではそういったものが見受けられませんでした。 相手が剣を振り下ろせば横に避けてから斬り、今にも振り下ろそうという相手には間合いを詰めて振り下ろす前に斬る。 そんな調子でばっさばっさと斬っていきます。 時代劇スタアの実力をみせつけられました。 この殺陣シーンは必見です。

TV版との共通点

水戸黄門といったら私を含めて現代の大抵の人々はTV版の水戸黄門を思い浮かべるかと思います。 この映画はそのTV版が始まるしばらく前の映画版ですが、TV版にも共通する部分がいくつか見受けられました。 

身分を隠して旅をする

これは当然といえば当然なのですが、本作での黄門様は身分を隠して旅をしています。 TV版もご存知の通りです。 しかし、本作では農家の隠居を名乗っており、TV版のちりめん問屋とは異なっています。

紋所を見せる

TV版では最後に三つ葉葵の印籠を見せることで悪役たちが平伏すというのが定番ですが、映画版では将軍家より下されたお守り袋を紋所として使用しています。

しかし、TV版では格さんが出すのが定番ですが、本作ではご老公自ら提示しています。 また、助さん格さんや悪人たちが入り乱れての斬りあいのさなかではなく、脱走したお縫を探しに来た奉行所の役人に見せています。 しかも、『これが目に入らぬか!!』バーンッと出すのではなく、懐からゆっくりとお守り袋を取り出しながら『この葵の御紋をなんと見る。』と静かに問います。 これも黄門様のやさしいながらも有無言わさぬ迫力が強調されていいですね。

悪役・柳沢吉保

今回の悪役の一人は柳沢吉保ですが、TV版でもしょっちゅう悪役として登場しています。 ただ、この方よく悪役にされる存在で、忠臣蔵でも黒幕的ポジションにいますね。 それゆえ、キャストも悪役然とした方が配置されることが多いです。

本作で柳沢を演じたのは進藤栄太郎さん。 1956年から1964年まで東映の専属俳優として印象的な悪役を数多く演じられました。

特にネタバレはなし

水戸黄門ですから勧善懲悪の物語です。 最後に悪はその身を滅ぼして終わります。 『悪の栄えたためしなし』 黄門様のいる世で悪が栄えることはないのです。

それでは、また。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です