【あらすじ・ネタバレ・感想】『悪名』(大映/1961年)

こんにちは、館主のおのまとぺでございます。

今回は、勝新太郎と田宮二郎が共演したヤクザ映画『悪名』のご紹介です。

作品情報

  • 公開日:1961年9月30日
  • 上映時間:94分
  • 制作・配給:大映
  • 英語タイトル『Tough Guy』

あらすじ

河内の暴れ者だった八尾の朝吉は同郷のお千代と駆け落ちしたが、宿屋で働く彼女が常連客と夜道で戯れているのを見るにつけ彼女を置いて大阪へと帰った。 旧知の友人たちと松島の遊郭へ繰り出した朝吉は、そこで琴糸という女に出会って宿へ通う様になる。 あるとき宿で友人たちが吉岡組の『モートルの貞』と喧嘩になり、これに巻き込まれた朝吉は翌朝貞と対決するがこれを打ち負かした。 吉岡組の親分は喧嘩の強い貞を破った朝吉の腕っぷしを見込んで客分として迎えた。 それから貞は朝吉と行動を共にする様になり、賭場でも喧嘩でも圧倒的な強さを誇る朝吉に惚れこんでいく。

ある日、吉岡組が他の組の出入りの助っ人に行くということで朝吉もこれに同行する。 しかし、これを心配した琴糸は宿を抜け出し吉岡組の事務所へ来てしまう。 琴糸は有力なヤクザの松島組の女だったので対立を嫌がった吉岡組は彼女を匿おうとせず、出入りから帰ってきた朝吉も追い出してしまう。 これを見た貞は吉岡の人望の無さに嫌気がさし、杯を返して朝吉とともに組を出る。

二人は脱走したのち松島組に捕まってしまった琴糸を取り返すため、彼女が売られた宿がある因島へ向かう。 

スタッフ

  • 監督:田中徳三
  • 原作:今東光
  • 脚色:依田義賢
  • 企画:鈴木晰成
  • 撮影:宮川一夫
  • 音楽:伊福部昭
  • 美術:内藤昭
  • 編集:菅沼完二
  • 録音:大谷巖
  • スチル:西地正満
  • 照明:岡本健一

登場人物

  • 朝吉(勝新太郎):河内出身の暴れ者。 腕っぷしが強く、義理人情に篤い。 琴糸に惚れこみ彼女を助ける為奔走する。
  • モートルの貞(田宮二郎):吉岡組の組員。 馬力があるためモートル(モーター)と呼ばれている。 朝吉にケンカで敗れてから彼に心酔する様になる。
  • 琴糸(水谷良重):松島組の娼館で働いている娼婦。 朝吉に惚れこみ娼館を脱走するが再び捕まってしまう。
  • お絹(中村玉緒):すき焼き店で働いている。 たまたま朝吉と出会い、お互いに仲を深めていく。
  • お千代(中田康子):朝吉と同郷の女。 子供ができたと嘘をつき朝吉と駆け落ちするが、見限られて置き去りにされる。
  • 吉岡(山茶花究):吉岡組の組長。 朝吉を客分として迎える。 弱気なところがあり、そのために貞に見限られてしまう。
  • おしげ(阿井美千子):因島の旅館『渡海屋』の仲居。 朝吉と貞の計画に協力する。
  • 麻生イト(浪花千栄子):因島でシルクハットの親分と勢力を2分する女親分。 朝吉とシルクハットの対立を仲裁する。
  • シルクハットの親分(永田靖):因島の親分。 奈良の木辻遊郭で商売をしていたが、事業に失敗しシルクハットをかぶって夜逃げをしたためこの名がついた。 捕まった琴糸の所有者となり朝吉と対立する。

感想

朝吉の男気とそれに惚れこんだ貞の痛快な活躍劇です。 朝吉は腕っぷしだけでなく頭もキレます。 そして困っている人を放っておけない男気も持ち合わせた魅力的なヒーローです。 そこに惚れこんだ貞も、親分に杯を返してまで浅吉ついていく純粋さを持ち、朝吉には劣るものの喧嘩もすこぶる強い。 よき兄貴分と弟分ですね。 ずんぐりとした体形の朝吉とノッポな貞という見た目のコントラストもおもしろいです。

あとは浪花千栄子さん演じる麻生親分の存在感がすごいですね。 画面から迫力があふれ出てくる様でした。 朝吉も『とんでもないのが出てきやがった・・・』なんて貞につぶやいた程でした笑

主演二人の存在感が濃い!!

第一印象はこれにつきます。 勝新太郎と田宮二郎、この名前が並ぶだけでもワクワクしてしまいます。 二人の演技がうまいので映画の世界に引き込まれてしまいます。 軽妙な関西弁のやり取りも観ていて実に小気味良いものでした。 田宮さんは大阪生まれの京都育ちなので関西弁はネイティブですが、勝さんは東京育ちですから関西弁は完全に演技ということになります。 ネイティブの関西弁話者ではないにも関わらず、あれだけ朗々とセリフを回せるのはすごいですね。 

キャストの中田康子さんについて

冒頭で朝吉と駆け落ちをするお千代役の中田康子さん。 笑顔がとてもかわいらしいです。 どんな方か調べてみたところ、もともとは東宝に所属していた女優さんだそうなんですが、大映の永田雅一社長が惚れこんで引っ張ってきたそうです。 そんな形だったので永田社長とのプライベートな関係も大映社内では公然の秘密だったそうです。 (詳しくは元・大映の宣伝部にお勤めでらっしゃった中島賢様のブログに記載されています。 ⇒  
https://blog.goo.ne.jp/ken401_001/e/ad5f31698a705c655c8af4b521f0ae98 )

勝新太郎と中村玉緒

この映画が公開された1961年、勝新太郎さんと中村玉緒さんが婚約されました。 映画の中でも朝吉とお絹が結婚します。 映画の終盤ではお絹が朝吉を大切にすると語るシーンもあり、ちょっとメタ的な演出で面白いところです。 大映の社員さんたちの間では中村玉緒さんは市川雷蔵さんと結婚するんじゃないかと噂されていたそうですが、実際には勝新太郎さんの猛アタックで結婚され死別するまで大変ラブラブだったそうです。

それでは、また。

1件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です