こんにちは、館主のおのまとぺでございます。
本日は大映が誇るオールスターキャストで制作された『次郎長富士』のご紹介です。
作品情報
- 公開日:1959年6月2日
- 上映時間:104分
- 配給・制作:大映
あらすじ
次郎長は子分・桝川仙右衛門の堅気の兄を殺害した小台小五郎の身柄を求めて、武井安五郎の許を訪れる。 両者の顔合わせでは一触即発の事態となったが、そこに居合わせた黒駒勝蔵のとりなしによって仙右衛門と小台が一騎討ちをすることとなった。 元侍である小五郎に苦戦したものの仙右衛門はこれを討ち果たすが、その決闘の最中に神域を血で汚してしまったという理由で次郎長は役人に追われる身となり旅に出ることとなった。 次郎長の妻・お蝶は次郎長の身を案じてその後を追うが、お供の石松の大失敗で持ち金がすべてなくなり大変な目に合うのだった。
スタッフ
- 監督:森一生
- 製作:三浦信夫
- 脚本:八尋不二
- 企画:浅井昭三郎
- 撮影:本多省三
- 音楽:齋藤一郎
- 美術:内藤昭
- 編集:谷口孝司
- 録音:林土太郎
- 照明:岡本健一
キャスト
- 清水次郎長:長谷川一夫
- 吉良仁吉:市川雷蔵
- おかつ:京マチ子
- おきく:若尾文子
- お新:山本富士子
- 森の石松:勝新太郎
- 小岩:根上淳
- 大野鶴吉:鶴見丈二
- 小政:本郷功次郎
- 江戸っ子金太:船越英二
- 大政:黒川弥太郎
- お蝶:近藤美恵子
- お妙:浦路洋子
- お松:中村玉緒
- おさい:三田登喜子
- おてる:小町瑠美子
- お艶:毛利郁子
- およし:阿井美千子
- 桶屋鬼吉:林成年
- 大瀬半五郎:品川隆二
- 法印大五郎:千葉敏郎
- 追分三五郎:石井竜一
- 神戸長吉:舟木洋一
- 浦島の亀:月田昌也
- 桝川仙右衛門:島田竜三
- 黒駒勝蔵:滝沢修
- 安濃徳次郎:小堀阿吉雄
- 帆下田の久六:清水元
- 豆狸長兵衛:伊沢一郎
- 熊五郎:本郷秀雄
- 大岩:杉山昌三九
- 三右衛門:荒木忍
- 武井安五郎:香川良介
- 竹垣三郎兵衛:原聖四郎
- 小台小五郎:尾上栄五郎
- 乙女大八:水原浩一
- 見付友蔵:寺島雄作
解説・評価
戯曲の定番の清水の次郎長を、目もくらむばかりの大映オールスターキャストで映画化した時代劇です。 またスター級の共演だけでなく、大映おなじみの脇役俳優も大挙出演しています。
私なりの見どころを列記しますのでご参考にどうぞ。
見どころ①『殺陣』
当時は時代劇の全盛期であり、殺陣のできる俳優が沢山いました。 また時代劇の大家ともいえる大映作品ですので、本作の殺陣は間違いなく見どころの一つです。 キャストたちがそれぞれの個性が現れる殺陣を繰り広げています。 中でも別格だったのが長谷川一夫さんと勝新太郎さんです。
長谷川一夫お流れる様な殺陣
長谷川一夫さんの殺陣は流れる様に進んでいきます。 力強さと流麗さを兼ね備えた殺陣でした。 この時すでに50歳を過ぎていましたが目千両は健在で、見栄を切る度に目がきらりと光ります。 さすが銀幕の大スターですね。
勝新太郎のコミカルかつ派手な殺陣
本作でもっとも殺陣がクローズアップされているのは勝新太郎さんじゃないでしょうか。 特にコミカルな演技を入れつつのアクションという、ひと際目立つ演出がいれられているので最も印象に残ります。 まだ不知火検校や座頭市シリーズが始まる前の若かりし頃の勝さんですが、その運動能力の高さや間の取り方、カメラ写りの良さなどを見ているとすでに大スターの風格が漂っています。
大人数入り乱れての殺陣
ラストの黒駒一家との出入りではキャスト入り乱れての大殺陣となっています。 画面を埋め尽くすほどの大人数での殺陣はなかなか見ごたえがあります。 また、先述の二人の様にクローズアップこそされないものの、林成年さんや千葉敏郎さん、根上淳さん、本郷功次郎さんなどたくさんの俳優がきらりと光る殺陣を披露しています。 特に黒川弥太郎さんの槍捌きは時間こそ短いものの見どころの一つです。 個人的には、普段悪役を演じることの多い千葉敏郎さんが快活な法印大五郎を演じているのがとても印象に残りました。
見どころ②『きらびやかな女優陣』
男性俳優陣は言うまでもないことですが、女優陣も豪華絢爛です。 大映の三大看板女優の京マチ子さん、若尾文子さん、山本富士子さんに加え近藤美恵子さん、中村玉緒さんらも出演しています。
京マチ子の舞踊
劇中で次郎長と黒駒のいさかいを収める為、京マチ子さん演じるおかつが見事な舞踊を披露します。 京マチ子さん本人の舞踊が艶やかで素晴らしいのと同時に、その後ろで多数の着物女性が舞っているのは実に豪華絢爛です。
※ここからネタバレあり
オールスターキャスト映画でありがちな、『とりあえず豪華キャストにしてみました』といった作品とは異なり、登場人物のキャラクターも立っていてとても楽しめる作品です。 長谷川一夫さんが大親分、市川雷蔵さんが義理人情に篤い友人の親分、勝新太郎さんがコミカルな森の石松、比較的冷静な大政とけんかっ早い小政をそれぞれ黒川弥太郎さんと本郷功次郎さんが演じるなど棲み分けがしっかりされているので、大人数が出演してもごちゃごちゃした印象はありません。
当時は市川雷蔵さんが人気絶頂で、劇中すぐ死んでしまうのもスケジュールの問題だったのかなと思われます。 一方、数年後にカツライスとして先の市川雷蔵さんと2枚看板となる勝新太郎さんは売り出しのためか、並み居る俳優のなかでもかなり特別な扱いを受けている印象です。 これが功を奏し、別行動をとっている森の石松のシーンが入ることで中だるみしない様な構成になりました。 また本郷功次郎さんも当時21歳とかなりの若手ですが、セリフや目立つシーンがちりばめられ期待されていたことが分かります。
それでは、また。