こんにちは、館主のおのまとぺでございます。
今回は市川雷蔵主演の時代劇コメディ映画『濡れ髪剣法』をご紹介します。
作品情報
・公開年:1958年11月8日
・上映時間:87分
・配給・製作:大映
あらすじ
遠州松平家の若殿・源之助は、自慢の剣の腕を許婚・鶴姫に散々痛めつけられ、大反省。しきたりだらけの若殿生活を抜け出し、自分の腕を試すため単身江戸へ向かった。右も左も知らない源之助は、早速団子屋で無銭飲食をしでかし捕まるが、柳橋の芸者・蔦葉に救われる。その後、源之助は源平と名を変え新しい生活をスタートさせるが…!?
角川映画公式HPより
スタッフ
- 監督: 加戸敏
- 脚本: 松村正温
- 撮影: 武田千吉郎
- 録音: 大角正夫
- 音楽: 鈴木静一
- 美術: 太田誠一
- 照明: 岡本健一
キャスト
- 松平源之助・・・市川雷蔵
- 鶴姫.・・・八千草薫
- おみね・・・中村玉緒
- 千浪・・・大和七海路
- 蔦葉・・・阿井美千子
- 芝田敬四郎・・・島田竜三
- 林主水・・・小堀明男
- 若林伊織・・・和泉千太郎
- 与平次・・・潮万太郎
- 安藤采女・・・本郷秀雄
- 小田切但馬守・・・小川虎之助
- 安藤将監・・・香川良介
- 大和屋弥七・・・荒木忍
- 結城甚兵衛・・・光岡竜三郎
- 佐吉・・・上田寛
- 松平信濃守・・・葛木香一
- 芝田孫大夫・・・南部彰三
- 安斎・・・東良之助
- 室井久馬・・・羅門光三郎
- 大原十内・・・原聖四郎
- 黒木三之亟・・・志摩靖彦
- 村岡一平・・・高倉一郎
- 兵助・・・石原須磨男
- 吉岡新吾・・・五代仙太郎
- おとく・・・大美輝子
- おたつ・・・金剛麗子
- 権三・・・堀北幸夫
- 伝三・・・浜田雄史
- 岸上与次郎・・・岩田正
- 土門兵助・・・福井隆次
- 蛯名八郎・・・安田祥郎
- 池上門三・・・菊野昌代士
- 畠中左内・・・大杉潤
ストーリー(※ネタバレあり)
遠州松平家の若殿・松平源之助(市川雷蔵)は、佐伯藩内では敵う者なしの武芸の達人・・・のはずであった。 源之助は許嫁の鶴姫(八千草薫)にいいところを見せようと家臣団相手に一体多数の剣の試合を披露する。 しかし、聡明な鶴姫はこれを家臣の演技であると喝破し、自分の側近・林主水(小堀明男)に手加減なしで相手をさせて源之助を完膚なきまでに打ちのめしてしまう。 これにはさすがの若殿もうぬぼれから目覚め大反省。 『あやつり人形の領主では領内n民百姓に申し訳がない』と自らの不明を恥じ、裸一貫市井に身を投じて修行を決意する。 そしてある晩ひそかに城を抜け出して江戸へと向かうのであった。
しかし、若殿として城内でしか生活をしたことのない源之助は傍から見ればオカシイとしか思えない行動をとってしまう。 団子屋では大量の団子を無銭飲食し、お代に着物を取り上げられそうになったところをお伊勢さん参りの帰りだった芸者の蔦葉(阿井美千子)に助けられ、さらには道中のためと幾ばくかの金子までをも恵んでもらう。 源之助はお礼にと家伝の印籠を渡し、『渡る世間に鬼は無し』などと嘯きながら妙な満足感とともに別れを告げる。 その後も田んぼの案山子の傘を盗んでは子供たちに追い掛け回されたり、さらには馬子が水辺で馬を洗っているところに現れては『つまらん馬じゃ』などと言って馬子を怒らせる。 しかし、源之助は素っ頓狂なことを言い続け最終的には金で解決。 これには一度は怒った馬子たちも 肩透かしを喰らい茫然の表情で見送るしかない。
そんな様子を見ていた大和屋弥七(荒木忍)は面白い奴だと源之助を江戸へ連れて行く。
その一方で若殿様が突然消えた城内はてんやわんや。 源之助の側近で家老の芝田孫大夫(南部彰三)は若殿不在をなんとかごまかそうと、病気で伏しているためお目通りかなわぬと見舞いに訪れた鶴姫に説明する。 しかし、鶴姫は『女に言いこめられ、試合に負けたぐらいで熱をだす様なそんな女々しい殿御とは会いたくない』と帰られてしまう。 さらには江戸家老・安藤将監(香川良介)の部下、結城甚兵衛(光岡龍三郎)が江戸への出立にあたって若殿との面会を強く希望する。 これに芝田は源之助が疱瘡にかかったことにして影武者を包帯でグルグル巻きにしてやりすごす。
若殿が重病という報は結城によってすぐ江戸の安藤のもとへと伝わる。 安藤は若殿が病床にいると聞いてほくそ笑む。 源之助の父親である信濃守も病床に伏しているため、御家乗っ取りの機会と考えているのだ。 邪魔となるであろう江戸へと向かっている芝田の息子・敬四郎も剣客を送り込んで亡き者にしようとしていた。
弥七のもと江戸で生活を始めた源之助は源平と偽名を名乗ることにした。 到着早々騒動ばかり起こしていた源之助改め源平は弥七の娘のおみねと出会う。 ある日大和屋の若い衆が剣の稽古とでたらめに竹刀を振り回しているところに出くわした源之助。 乱入しては剣術で圧倒するも、スキを突かれて頭に竹刀を食らい伸びてしまう。 弥七から『道楽の剣』と『必死の剣』の違いを諭され大和屋で修業をすることを決める。
その後、大和屋に大きな仕事が舞い込む。 それがまさかの安藤の御代参のお供。 嫌々ながら連れてこられた源之助であったが、この行列が道中で旗本の妨害に会い『田舎大名』とののしられたことで大立ち回り、相手を這う這うの体で退散させる。 これを気に入った安藤に召し抱えられ、佐伯藩の江戸屋敷の中に与平次と住むこととなる。 そこで安藤の悪だくみを耳にする。
ちょうど源之助が屋敷に移ったhに、鶴姫が屋敷に乗り込み源之助との破談を申し入れる。 息子の采女(本郷秀雄)の機転で鶴姫を屋敷で接待することになる。 ここで源之助は主水と再戦の機会を得ることになり、これに見事勝利した源之助は士分に取り立てられ50石加増となる。 しかし、同時に鶴姫は源平が源之助であると気づく。 千浪(大和七海路)の計らいで顔を合わせるも鶴姫は自分の屋敷で下働きをしている源之助に大層お怒り。 しかし、源平はそれをみてまだ鶴姫が自分を好いていると安心するのであった。
一方、悪だくみを進める安藤一派は敬四郎が文を預けた使いを暗殺し、その内容に首をかしげていた。 『失せ者未だにみつからず』、源之助が疱瘡だと信じ込んでいた一派には失せ者が誰のことか検討がつかなかったのである。 しかし、孫大夫が息子の敬四郎を送り込んでくるということは、安藤一派に探りを入れるためだと考えこれを暗殺しようとする。 安藤はなんとこれを源之助に任せたのである。
引き受けた源之助は江戸へと向かう敬四郎の前に立ちはだかる。 しかし、お互いに覆面をしており相手が誰だかわからず、源之助はなんだかよくわからない口上を述べて切りかかる。 その途中で敬四郎の傘が切れて顔が見え、互いに刀を収める。 鈴ヶ森の罪人の死体を切っておくことで刀を刃こぼれさせ、目付け役として同行していた室井久馬(羅門光三郎)の目をごまかし合流に成功する。 大和屋に帰った敬四郎に安藤の悪だくみを話すが、これを聞いたおみねは協力を申し出る。
屋敷の女中に化けたおみねは采女に色仕掛を試みて、鶴姫と采女の縁組の話と信濃守に届けている薬に何か仕掛けがあることを聞き出す。 また、源之助は安藤より采女との縁組の話を鶴姫の父・小田切但馬守に申し入れいいく様命令される。 但馬守は源平が源之助であることに気づくが、鶴姫の助力によりとぼけ通す。 鶴姫は源之助からのアイコンタクトで采女からの求婚に応ずることとする。 また、これに怒り心頭となった但馬守も源之助の含みのある言い方に何かを悟りこれを認める。
時を同じくしてお屋敷ではおみねが信濃守に源之助からの手紙を手渡す。 これによってすべてを悟った信濃守は狂気を演じる。 これに騙された安藤親子はいよいよ信濃守・源之助親子の暗殺のため屋敷に釣り天井を仕込む。 しかし、いまだに源平だと思われている源之助にもしっかりこれを見せてしまうのだった。 その晩、源之助は何かを目論んで与平次に穴を掘らせた。
その後、采女と鶴姫との結納の祝いの席が設けられる。 しかし、そこに踊り子として蔦葉が現れ、安藤に印籠を見られてしまったことで源平が源之助であることが露見してしまう。 安藤は釣り天井で親子もろとも亡き者にしてしまう。 安藤は江戸に到着した孫大夫や家臣には信濃守は発狂して川へ身投げをして死亡したこととし、若殿は行方不明となったため采女を信濃守の養子とし松平家の家督を継がせることを提案する。
だが、そこに釣り天井の部屋から穴を伝って脱出した源之助が登場。 安藤を断罪するも江戸屋敷の家臣にはすでに手が回っていたと見え、多数の逆臣たちとの斬り合いとなる。 市井で学んだ必死の剣の真骨頂とばかりに斬って斬って斬りまくり、終いに悪の根幹・安藤をその手で討ち取る。
若殿として国へ帰った源之助は鶴姫との仲も戻り、めでたしめでたし。
感想
市川雷蔵演じるおとぼけ若殿様が市井での修行を通して成長していく物語です。 全体に軽妙なタッチで描かれており、気楽に見れて笑える映画です。 また、セリフ回しが面白く、主人公が劇中でいちいち格言めいたことを言ったり、妙な言い回しをするのが面白いですね。 以下簡単に書き出してみました。
『駿馬も老いれば駑馬となる』 ⇒ 本来は『駿馬も老いては駑馬に劣る』が正しいみたい
『憎まれっ子世にはばかる』
『バカとはさみは使いようで切れる』
『歯並みの悪いばあさんの口』 ⇒ 『スキだらけ』という意味笑
『瓦も磨けば玉となる』
『能ある鷹は爪を隠す』
『縁は異なもの味なもの』
『西と言ったら東と思え』 ⇒ こちらも本来は『西と言ったら東と悟れ』が正しい模様
『老いては子に従え』
中には聞きなれたことわざもありますが、妙なシチュエーションで口にするのが面白いです。
また、この時代の作品では当然ですが、いまでは絶対に口にできない様な差別用語も飛び出します。(キ〇ガイ、劇中ではキ印と言い換えられたりもします。
キャストについては、まず市川雷蔵さん、とてもさわやかでどこか浮世離れした感じがとても似合います。 また源平として話しているときの柔らかな声から、安藤を断罪するときのどすの効いた声、そのあとの口上の迫力とさすが名優の発声でした。 決めゼリフの『五万三千石の世継ぎの引き出物、この源之助の破邪の剣、閻魔の庁への土産代わりじゃ!!』これかっこよかったなぁ~
八千草薫さんは三国一の姫の役に恥じないあまりにも可憐なお姿でした。 正直ここまでキレイな方ってテレビでも他にお見かけしたことがないくらい。 画面を通しても、半世紀以上の時を超えても色あせない美しさでした。 (2019年10月28日、八千草薫さんが鬼籍に入られました。 たまたまこの映画を見た二日後でした。 宝塚ファンでもある自分にとってはとてもショックです。 心からご冥福をお祈りします。)
中村玉緒さんも可愛らしい娘さんをコミカルに演じてらっしゃいます。 サンタマミーなどのバラエティーでの玉緒さんしか知らなかった私としてはとても新鮮な光景でした。 この数年後に勝新太郎さんと結婚するんですねぇ・・・。
脇役のキャストも個性豊かでした。 いかにも家老といった感じの南部彰三さんやいかにも悪役といった感じの香川良介さん、これまたいかにも剣客といった風体の羅門光三郎さんと個性的な面々が画面を彩っています。
それでは、また。