【あらすじ・ネタバレ・感想】『濡れ髪三度笠』(大映/1959年)

こんにちは、館主のおのまとぺでございます。

本日は濡れ髪シリーズの第2作『濡れ髪三度笠』のご紹介です。

作品情報

  • 公開日:1959年8月1日
  • 上映時間:98分
  • 配給・制作:大映

あらすじ

将軍・徳川家斉の38番目の息子である長之助は長らく岡崎藩でくすぶっていたが、くじ引きで甲州鷹取藩の跡取りになることが決まった。 長之助は老臣・平左衛門とともに江戸を目指すが、わが子を鷹取藩の跡取りに据えんともくろむ堀尾備前守は岩間五郎太の一党を刺客として差し向ける。

長之助は宿屋に宿泊している最中に刺客の襲撃を受けるが、以前縁日で長之助を助けた縁のあった半次郎が刺客を撃退する。 この後、変装した長之助は行列とは別に行動することとなり、その道中で半次郎と再会する。 正体を隠した長之助は半次郎と道中をともにすることになる。

次の宿で再び襲撃を受けるも半次郎の活躍で辛くも刺客を撃退したが、長之助は家来をすべて失ってしまう。 半次郎平左衛門の最期の願いを聞き入れ、 守るものもおらず裸同然の体になってしまった長之助を江戸まで守ることを誓うのだった。

スタッフ

  • 監督:田中徳三
  • 製作:三浦信夫
  • 脚本:八尋不二
  • 企画:浅井昭三郎
  • 撮影:武田千吉郎
  • 音楽:飯田三郎
  • 美術:内藤昭
  • 編集:菅沼完二
  • 録音:林土太郎
  • 照明:岡本健一

キャスト

  • 濡れ髪の半次郎(市川雷蔵):旅の渡世人 義理人情に篤く、縁日で絡まれていた長之助を助けて大立ち回りをする その後旅の道中で再び長之助と出会い、平左衛門からの願いを聞き入れ長之助を道中守ることになる
  • 長之助(本郷功次郎):将軍家斉の38番目の息子 くじ引きで鷹取藩の藩主となることになったが、江戸へ向かう動中命を狙われてしまう
  • お蔦(淡路恵子):半次郎を追いかけまわしてる女
  • おさき(中村玉緒):半次郎と相部屋になった田舎娘 年貢を用立てるため身売りされることになっている
  • おとし(楠トシエ):縁日で歌を歌いながら飴を売っている女
  • 喜多八(中田ダイマル):弥次郎兵衛の相棒 旅の途中で岩間達に捕まる
  • 弥次郎兵衛(中田ラケット):喜多八の相棒 旅の途中で岩間達に捕まる
  • 宿の若い衆(和田弘とマヒナ・スターズ):宿『かぎや』の番頭と若者たち 歌がうまいと評判になっている
  • 岩間五郎太(千葉敏郎):堀尾備前守が長之助暗殺のために差し向けた刺客
  • 松平伊豆守(伊沢一郎):老中筆頭
  • 川辺甚之丞(水原浩一):堀尾備前守の腹心 
  • 徳川家斉(本郷秀雄):徳川幕府第11代将軍 鷹取藩の跡継ぎをくじ引きで決めることを発案する
  • 久保寺平左衛門(小川虎之助):長之助を守り育ててきた老臣 長之助の江戸への旅に同行する
  • 堀尾備前守(尾上栄五郎):自分の娘が産んだ将軍の若君を鷹取藩主に据えるため、長之助を亡き者にしようと画策する
  • 源助(寺島雄作)
  • 与助(葛木香一)
  • 巽玄之進(光岡龍三郎)
  • 西村肥後(伊達三郎)
  • 五兵衛(天野一郎)
  • 万吉(石原須磨男)
  • テキ屋の親分(玉置一恵)
  • 岸正人(遠山金四郎)
  • 坂東弥十郎(浜田雄史)
  • 川番所役人(藤川準)
  • いかさま師の島吉(越川一)
  • 倉田(井上武夫)
  • 三次(河田好太郎)
  • 小森新太郎(沖時男)
  • 勘太(松岡良樹)
  • 鶴千代君(谷本悟視)

感想

濡れ髪股旅コメディ

身分を隠した若殿様と旅がらすの渡世人の股旅コメディでした。 同シリーズの前作『濡れ髪剣法』では市川雷蔵さんが若殿役でしたので、本作ではその役を本郷功次郎さんに譲ってその若殿を守り色々教える渡世人の役に回っています。 二人で酒を呑むときに長之助がロクにあぐらもかけなかったり、道中で貸元に仁義をきる場面では偉そうな態度をとる長之助に半次郎が困り果てたりと役柄を活かした笑い随所に散りばめられています。

また、その笑いのあいだ間に殺陣が盛り込まれ、緊張感といいテンポをだしています。 この殺陣もちょっと変わっていて、半次郎が傘だったり、縁日で売っているものだったり、しまいには下駄まで持ち出して戦います。 この辺りのアクションも見どころとなっています。

ただストーリー展開的に少々無理があるところもありましたので残念に思うところであります。 個人的には70点くらいの作品でした。

若かりし中村玉緒さん

本作の中村玉緒さんがひときわかわいかったです。 イケメンな本郷さんとのペアは大変麗しいですね。 女郎として売られる運命にあるという重い背景を持った役でしたが、最後に報われるのでホッと一安心。

史実の徳川家斉について

劇中で主人公は将軍家斉の36番目の子という設定になっていますが、実際の家斉も子だくさんだったそうで、確認されているだけでも妾16人に男子26人、女子27人を生ませたそうです。 これには子女を大名の養子にしたり結婚をさせることで、縁戚関係を結び諸大名を統制する狙いがあったそうです。 しかし、その子供たちの多くは成人前に半数ほどが死去したり、成人しても子が無かったりしたため、その子孫が今も残っているのは53人の子のうち3人のみだそうです。


※ここからネタバレあり!!

少々無理のある展開

岩間五郎太の一党は50石で堀尾備前守に雇われていましたが、半次郎から100石の褒章をちらつかされたことで簡単に寝返ってしまいます。 お墨付きこそあれただの手書きの書状ですし、まだ実際に藩主にすらなっていない長之助の名前にそこまでの威力があるとは思えません。

また、最後堀尾備前守の悪事を将軍の前でぶちまけますが、証拠が何もなく老獪であろう堀尾備前守があの程度で追い込まれてしまうとは到底思えません。 また大名就任を辞退することなんてそもそも不可能なんじゃないでしょうか? 加えてこれは平左衛門の悲願を立ち消えにし、五郎太たちに褒章を約束した半次郎を嘘つきにしてしまう行為です。 あまり気持ちのいいエンディングではありませんでした。

また濡れ髪シリーズ前作の『濡れ髪剣法』に比べると笑える場面も少なく今一つパッとしない印象の一作でした。

それでは、また。

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