こんにちは、館主のおのまとぺでございます。
今回は特撮ホラー作品『妖怪百物語』のご紹介です。
作品情報
- 公開日:1968年3月20日
- 上映時間:79分
- 制作・配給:大映
あらすじ
豪商の但馬屋利右衛門は寺社奉行の堀田豊前守と手を組み、祭神不明のお社と町人が平和に暮らす長屋をまとめて更地にし賭場を作って一儲けしようと企む。 長屋は甚兵衛の持ち物だったが、かつて利右衛門は甚兵衛の妻が病気だったのをいいことに、薬代として甚兵衛に大金を貸し付けそのカタとして長屋を取り上げようとしていた。 住民たちは当然反対したが利右衛門が聞く耳を持つはずがなかった。 利右衛門は堀田ら有力者たちを招いて一席を設け、その余興として百物語の会を開いた。 しかし、言い伝えなど信じようとしない利右衛門は、しきたりだった憑き物落としのお呪いをせずに参加者に小判を持たせて散会にしてしまった。 するとたちまち怪異が起こり、大量の妖怪たちが現れて利右エ門たちに牙をむき始めた。
スタッフ
- 監督:安田公義
- 脚本:吉田哲郎
- 企画:八尋大和
- 撮影 竹村康和
- 音楽 渡辺宙明
- 美術 西岡善信 、 加藤茂
- 編集 菅沼完二
- 録音 大角正夫
- スチル 小山田輝男
- 照明 伊藤貞一
キャスト
- 大木安太郎:藤巻潤
- おきく:高田美和
- 太吉:平泉征
- お仙:坪内ミキ子
- 新吉:ルーキー新一
- 林家正蔵:林家正蔵
- 但馬屋利右衛門:神田隆
- 堀田豊前守:五味龍太郎
- 重助:吉田義夫
- 藤兵衛:水原浩一
- おりく:小倉康子
- 伍平:浜村純
- 茨木伴内:杉山昌三九
- 甚兵衛:花布辰男
- 浪人一:伊達三郎
- 浪人二:山本一郎
- 町年寄:南部彰三
- 老僧:荒木忍
- 名主:玉置一恵
- お寅:近江輝子
- 大首:小柳圭子
- 浪人の妻:毛利郁子
- 語り手:内藤武敏
感想
この映画が公開された1968年は『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎の最初のアニメシリーズの放映が始まり妖怪ブームに火がついていた時期でした。 その時勢をタイムリーに捉え春の映画に大映が『妖怪百物語』を公開しました。 また、『怪獣ブーム』も続いており、併映作品に『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』を公開しました。 この特撮2本立てという豪華なスタイルは、当時特撮の大家であった東宝ですら実現しえなかったことです。 これは東京、京都と二つの撮影所をもち、それぞれが独立して動いていた大映だからこそできた離れ業でした。
子供向けでありながらも重いストーリー
妖怪ブームにぶつけるための映画ですし、併映作品がガメラシリーズですので当然子供向けの作品ということになりますが、ストーリーは大映らしい時代劇然といたものがたりです。 豪商が寺社奉行と組んで岡場所を作るという話は子供に理解できるんでしょうか? ゴジラやガメラ、ウルトラシリーズなどと比較するとかなり大人向けの印象を受けますね。
妖怪の特撮
ガメラや大魔神の制作実績のある大映ですから特撮はお手の物と思われますが、スケールの大きい怪獣映画の特撮と妖怪ものの特撮は異なる部分があります。 等身大の人間相手に室内でストーリーが展開する部分も多いので試行錯誤もあったのではないかと思いますが、ブルースクリーンを使用するなど完成度の高い映像に仕上がっています。
障子を開けると巨大な大首がのぞいているシーンは結構怖いです。 また、壁の落書きが飛び出してくるから傘お化けはアニメーションを合成することでコミカルな動きを演出しています。 実体化したあとの空傘お化けは数十本ものピアノ線を複数のスタッフで操作したそうです。 手が込んでいます。
※ここからネタバレあり
子供向けということもあってラストは悪者が全滅して終わります。 当時の子供たちは『妖怪が悪者たちを懲らしめてくれた』と思ったことでしょう。 しかし、作品を思い返してみれば、妖怪たちは百物語のあとに憑き物おとしのおまじないをしなかったから現れたのであって、決して長屋を救おうとか悪者を成敗しようとして出てきたわけではありません。 仮に冒頭の百物語で長屋の人々がおまじないをしなければ、妖怪たちは彼らに向かって牙をむいていたのかもしれません。 妖怪たちはあくまで人知、善悪を超えた存在であって、これは八百万の神々を進行する日本古来の神道に通じる価値観です。 当時はまだそういった現実を超えた存在に敬意や畏れを抱く感覚が残っていたのでしょうか。 テクノロジーが社会を支配する昨今、妖怪たちが次にやってくるのは、人知を超えた存在などに思いをはせなくなった我々のもとかもしれません。
それでは、また。