[感想・解説]ウルトラセブン 第26話『超兵器R1号』

こんにちは、おのまとぺ(゜∀。)です。

今回は人類が他の惑星を破壊するという凶行に出ます。 ウルトラセブンが今までにない苦悩に苛まれるエピソードです。

第26話『超兵器R1号』

登場怪獣:ギエロン星獣
登場メカ・兵器:超兵器R1号、新型ミサイル、ウルトラホーク1号、3号


脚本:若槻文三
監督:鈴木俊継
特殊技術:的場徹

放送日:1968年3月31日

あらすじ

地球防衛軍基地内の秘密工場で恐るべき破壊兵器が作られていた。 その名は『R1号』。 地球から遠く離れた他の惑星を攻撃するために開発された恐るべき威力の攻撃兵器であった。 その実験のため科学者たちはギエロン星を爆破することとした。 この星は調査の結果生物はいないはずであった。 そして、実験は見事成功し、ギエロン星は目論見通り宇宙の藻屑と消えてしまった。 しかし、破壊されたギエロン星の方角から高速で飛来する物体があった。 それはR1号の放射能を吸収し強力な怪獣となったギエロン星の原住生物ギエロン星獣だったのである。

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キャスト

  • 前野律子博士(田村奈巳):宇宙生物学の第一人者。半年に及ぶ調査の末にギエロン星を実験場に選んだ。
  • 瀬川博士(向井淳一郎):地球防衛国際委員会所属の科学者。R1号の開発に携わっている。
  • タケナカ参謀(佐原健二):地球防衛軍の高官。R1号の実験の指揮を執る。

感想・解説(※ネタバレあり)

今回のエピソードでは人間側の行動に疑問が投げかけられます。 『身を守るための破壊兵器』といえば聞こえはいいですが、ではどこまで強力な兵器を造れば終わるのか。 そんなテーマが織り込まれていました。

登場用語解説

ここでちょっと用語解説です。 いくつか出てきた固有名詞を紹介します。

  • ギエロン星・・・シャール星座の第7惑星。気温が270℃、酸素濃度0.6%という環境で生物はいないと考えられていた。
  • 超兵器R1号・・・新型水爆8000個の爆発力を持つ惑星間攻撃ミサイル。宇宙からの侵略への抑止力として期待されている。実験のためギエロン星へ向けて発射される。
  • R2号・・・R1号の発展型でR1号の十数倍の爆発力を持ち、一発で地球を2,3個消滅させられる威力。R1号の実験が成功したのち製造に入る予定だった。

ウルトラシリーズ屈指の名台詞誕生

1962年 キューバ危機

 このエピソードでは『使わなくても超兵器があるだけで平和が守れるんだわ』というアンヌのセリフがありますが、デタント前ということもあって大量破壊兵器による相互確証破壊がテーマに組み込まれています。 ウルトラセブンが放映された1960年代はまだ冷戦真っ只中で、1962年にはキューバ危機がありました。 この頃、核兵器の脅威というのはリアルタイムの問題だったわけです。 アメリカが強力な核兵器を造れば、ソビエトはさらに強力なものを、その次にはアメリカがさらに驚異的な核兵器を・・・そんな軍拡競争の時代でした。 この情勢を序盤のダンとフルハシの口論で表現しています。 そしてそのシーンの終わりにダンがつぶやきます。

『それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ』

 私としては数あるウルトラシリーズの名台詞の中でも初代ウルトラマンの『故郷は地球』でのイデ隊員のセリフ『犠牲者はいつもこうだ。文句だけは美しいけれど』に並ぶ名台詞だと思っています。 戦争を経験した世代が出演者・スタッフともに多い作品ではこういった平和への希求とも思えるセリフの重みが違うように感じます。

R-7ロケット(wikipediaより)

 なお、余談ですが超兵器R1号のロケットは外見がソ連のスプートニクやボスホートといったR-7系のロケットに似ています。 R-7が世界初の弾道ミサイルであったことや、放映当時スプートニクショックからまだ10年程度で、さらにアメリカの月面着陸より前の時代だったためソ連のロケットの方が印象に残っていたのかもしれませんね。 

人類とダンの思いの違い

 地球人である地球防衛軍の面々は『超兵器R1号』の完成に喝采していました。 宇宙からの侵略者との闘いの最前線にいたウルトラ警備隊ですから、強力な兵器の誕生はとうぜん嬉しいことでしょう。 しかし、その中でひとり宇宙人であるダンは浮かない顔をしていました。 地球人の青年の命がけの行動に心を打たれて地球のために戦っているダン=セブンにとっては、地球人が破壊者になりかねない大量破壊兵器はとても歓迎できるものではありません。 しかも実験のために平気で星を破壊する様な人間に失望すらしたかもしれません。 しかし、結局実験は強行され母星を失ったギエロン星獣が地球を襲い、唯一違う立場から意見を言えたダンは実験を妨害しなかったことを悔います。

 一旦新型ミサイルを搭載したウルトラホークの攻撃でギエロン星獣は爆散したものの、科学者はR2号の製造をやめるどころかR3号、R4号の建造にまで言及します。 そして瀬川博士は復活したギエロン成獣にR2号を使用することまで進言します。 このシーンは地球人としては道理が通っていなくもない分おそろしく感じました。

特撮もスゴい!!

 そんなストーリー性の強い本エピソードですが、映像面でもR1号の発射シークエンスからギエロン星着弾までのシーンギエロン星獣にウルトラホーク1号、3号が連携攻撃を仕掛けるシーンは迫力がありました。 特に後者はかなりの高火力で攻撃していることを表現するためか、ホークの横や正面から撮ったカットを目まぐるしく切り替えて、さらに大量の火薬を使用してスピード感とド迫力の攻撃映像になっています。

 また爆散したギエロン星獣が徐々に回復していくとシーンの特撮も見応えがありました。 ギエロン星獣の体液やバラバラになった体のパーツが徐々に集まって復活していく様は、まるでターミネーター2の液体金属を先取りした様な映像でした。 ギエロン星獣との対決のあとの川を羽毛が流れていくシーンも美しかったですね。

セブンとギエロン星獣の対決

 復活後のギエロン星獣はさらに強くなっており、ウルトラ警備隊の猛攻にもびくともしません。 さらにはR1号から吸収した放射能の灰をまき散らし、このままだと東京が危機に陥るというところでダンがセブンに変身します。 セブンはこの放射能の灰にはビクともしません。 それもそのはず、太陽の近くでエネルギーをチャージするセブンは、強力な放射線を含む宇宙線を全身に浴びてもへっちゃらですから放射能の灰くらいではどうともなりませんよね。

 しかし、ギエロン星獣も強力になっているだけあって、その頑丈な翼や頭部でアイススラッガーをはじき返してしまいます。 さらに両翼の間からリング状の光線を出し、これにはセブンも文字通り手を焼いていました。 撃たれた手を抑えてうずくまるセブン、これはピンチか・・・

と思いきや、天気が良かったので突然勝ちパターンになります(゚д゚)

 もしかしたら別の意図があるのかもしれないけど自分にはそうとしか読み取れませんでした(笑) しかも宇宙人のセブンだから少しはギエロン星獣に同情するんじゃないのかと思っていたら、太陽を浴びたあとは素手でギエロン星獣の翼をもぎ取り、それをぶん投げてぶつけるという鬼畜の所業に出ます。 おいおい急にどうしたセブン・・・。 その後自分の片翼をぶつけられて倒れ込み、地面で痛みに悶え苦しむギエロン星獣。 これを見たセブンも一瞬動きを止めて今度こそ同情しているのかと思ったら・・・

手に持ったアイスラッガーで倒れ込んだギエロン星獣の首をかっ切りました。

 しかもなんか座頭市の勝新みたいな動きで。 噴き出すギエロン星獣の黄色い血。 返り血を浴びるセブン。 いや、黄色いからマイルドになってるけど、実際宇宙人の実録ヤクザ映画シリーズ状態ですよコレ

まあそんなこんなでなかなか強烈なバトルシーンでした(;´∀`)

恐ろしく美しい田村奈巳さん

 このエピソードでは東宝出身の女優、田村奈巳さんがゲストとして出演しています。 田村さんといえばウルトラQ第5話『ぺギラが来た!』や初代ウルトラマン第35話『怪獣墓場』に出演していらっしゃいました。 今回の役どころはギエロン星を実験場として選んだ宇宙生物学者です。 このキャラクターは若干マッドサイエンティスト的な側面もあって、『実験が成功すればギエロン星は宇宙から姿を消すでしょう(ニコニコ)』と美しい顔満面に笑顔を称えて、キラキラ光る澄んだ瞳で宙を見つめながら平然と言ってのけます(;´∀`) 抜群に美しいけど怖いよ前野博士・・・汗

 しかし、最後には心変わりしてダンの言葉をかみしめ、人類がそんなマラソンを続けるほど愚かなのかと疑問を投げかけてR2号開発中止へと動きます。 ラストシーンのダンと話すときの美しさと言ったら・・・ε-(´∀`*)

小ネタ

  • ギエロン星獣への最初の爆撃の直前のシーンでアマギが『新型ミサイルをホーク2号に取り付けた』と言っているにも関わらず、実際に攻撃しているのはホーク3号。 さらにミサイルと言っているにも関わらず実際には自由落下爆弾が使用されている。
  • 最期のリスのシーンは、もともと台本では『やめるんだ、もうやめるんだ、お前も・・・』とダンが心の中で語り掛ける演出になっていたが、心の声は入れずに視聴者に考えさせる形になった(※1)

出典

※1 小学館『ダンとアンヌとウルトラセブン: ~森次晃嗣・ひし美ゆり子 2人が語る見どころガイド~』P.59より

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