【前のエピソード】ウルトラセブン第26話『超兵器R1号』

こんにちは、おのまとぺ(゜∀。)です。

今回は人類が他の惑星を破壊するという凶行に出ます。 ウルトラセブンが今までにない苦悩に苛まれるエピソードです。

第26話『超兵器R1号』

登場怪獣:ギエロン星獣
登場メカ・兵器:超兵器R1号、新型ミサイル、ウルトラホーク1号、3号

脚本:若槻文三
監督:鈴木俊継
特殊技術:的場徹

放送日:1968年3月31日

キャスト

  • キリヤマ隊長(中山昭二):地球防衛軍のエースであるウルトラ警備隊の隊長。優しさと威厳をもって隊をまとめ上げている。『何っ!?』が口癖。
  • モロボシ・ダン(森次晃嗣):ウルトラ警備隊の隊員。その正体はウルトラセブンである。ウルトラアイを用いて変身する。
  • フルハシ隊員(石井伊吉):ウルトラ警備隊の隊員で地球防衛軍きっての肉体派。北海道出身。
  • アマギ隊員(古谷敏):ウルトラ警備隊の隊員。名古屋出身。兵器開発に長けており、様々な武器を作り出す。爆弾にトラウマがある。
  • ソガ隊員(阿知波信介):ウルトラ警備隊の隊員。九州出身。射撃の名手。ダンと行動を共にすることが多い。
  • 友里アンヌ隊員(ひし美ゆり子):ウルトラ警備隊の隊員。隊の紅一点。普段はメディカルセンターに勤務している。
  • 前野律子博士(田村奈巳):宇宙生物学の第一人者。半年に及ぶ調査の末にギエロン星を実験場に選んだ。
  • 瀬川博士(向井淳一郎):地球防衛国際委員会所属の科学者。R1号の開発に携わっている。
  • タケナカ参謀(佐原健二):地球防衛軍の高官。R1号の実験の指揮を執る。

あらすじ

ギエロン星獣(ソフビ人形)

 地球防衛軍基地内の秘密工場で恐るべき破壊兵器が作られていた。 その名は『R1号』。 地球から遠く離れた他の惑星を攻撃するために開発された恐るべき威力の攻撃兵器であった。 その実験のため科学者たちはギエロン星を爆破することとした。 この星は調査の結果生物はいないはずであった。 そして、実験は見事成功し、ギエロン星は目論見通り宇宙の藻屑と消えてしまった。 しかし、破壊されたギエロン星の方角から高速で飛来する物体があった。 それはR1号の放射能を吸収し強力な怪獣となったギエロン星の原住生物ギエロン星獣だったのである。

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感想・解説(ネタバレあり)

 今回のエピソードでは人間側の行動に疑問が投げかけられます。 『身を守るための破壊兵器』といえば聞こえはいいですが、ではどこまで強力な兵器を造れば終わるのか。 そんなテーマが織り込まれていました。

登場用語解説

ここでちょっと用語解説です。 いくつか出てきた固有名詞を紹介します。

  • ギエロン星・・・シャール星座の第7惑星。気温が270℃、酸素濃度0.6%という環境で生物はいないと考えられていた。
  • 超兵器R1号・・・新型水爆8000個の爆発力を持つ惑星間攻撃ミサイル。宇宙からの侵略への抑止力として期待されている。実験のためギエロン星へ向けて発射される。
  • R2号・・・R1号の発展型でR1号の十数倍の爆発力を持ち、一発で地球を2,3個消滅させられる威力。R1号の実験が成功したのち製造に入る予定だった。

ウルトラシリーズ屈指の名ゼリフ誕生

1962年 キューバ危機

 このエピソードでは『使わなくても超兵器があるだけで平和が守れるんだわ』というアンヌのセリフがありますが、ウルトラセブンが放送された1960年代ががデタント前の冷戦真っ只中の時代ということもあって大量破壊兵器による相互確証破壊がテーマに組み込まれています。 特に1962年にはキューバ危機があり、米ソ間で核戦争が勃発する一歩手前まで緊張が高まりました。 この頃、大量破壊兵器の脅威というのはリアルタイムで身近な問題だったわけです。 アメリカが強力な核兵器を造れば、ソビエトはさらに強力なものを、その次にはアメリカがさらに驚異的な核兵器を・・・そんな軍拡競争の時代でした。 この情勢を序盤のダンとフルハシの口論で表現しています。 そしてそのシーンの終わりにダンがつぶやきます。

『それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ』

 私の中では数あるウルトラシリーズに登場した名文句の中でも初代ウルトラマン『故郷は地球』でイデ隊員が口にした『犠牲者はいつもこうだ。文句だけは美しいけれど』というセリフに並ぶ名ゼリフだと思っています。 実際に戦争を経験した世代が出演者・スタッフともに多い作品ではこういった平和への希求とも思えるセリフが段違いの重み持っているように感じます。

 なお、余談ですが超兵器R1号のロケットは外見がソ連のスプートニクやボスホートといったR-7系のロケットに似ています。 R-7が世界初の弾道ミサイルであったことや、放映当時スプートニクショックからまだ10年程度で、さらにアメリカの月面着陸より前の時代だったためソ連のロケットの方が印象に残っていたのかもしれませんね。

人類とダンの思いの違い

 地球人である地球防衛軍の面々は『超兵器R1号』の完成に喝采していました。 宇宙からの侵略者との闘いの最前線にいたウルトラ警備隊ですから、強力な兵器の誕生はもちろん喜ばしいことだったわけです。 しかし、その中でたったひとり宇宙人であるダンは浮かない顔をしていました。 地球人の青年の命がけの行動に心を打たれて地球の平和のために侵略者と戦っているダン=セブンにとっては、地球人が破壊者になりかねない大量破壊兵器はとても歓迎できるものではなかったのです。 しかも実験のために平気で他の星を破壊してしまう様な人間の傲慢さに失望すらしたかもしれません。 そして、実験が決行され、母星を失ったギエロン星獣が地球を襲い甚大な被害を出してしまいます。 地球上で唯一宇宙人として人間とは違った視点から意見を言えたはずのダンは、この実験を妨害しなかったことを後悔します。

 一度は新型ミサイルを搭載したウルトラホークの攻撃でギエロン星獣は爆散したものの、科学者はR2号の製造をやめるどころかR3号、R4号の建造にまで言及します。 そして瀬川博士は復活したギエロン成獣にR2号を使用することまで進言します。 この科学者の狂気とも思えるシーンは、よく考えてみれば道理が通っていないこともない分、現実でも発生しそうな考え方でおそろしく感じました。

特撮もスゴい!!

 そんなストーリー性の強い本エピソードですが、映像面でもR1号の発射シークエンスからギエロン星着弾までのシーンギエロン星獣にウルトラホーク1号、3号が連携攻撃を仕掛けるシーンは迫力がありました。 特に後者はかなりの高火力で攻撃していることを表現するためか、ホークの横や正面から撮ったカットを目まぐるしく切り替えて、さらに大量の火薬を使用してスピード感とド迫力の攻撃映像になっています。

 また爆散したギエロン星獣が徐々に回復していくとシーンの特撮も見応えがありました。 ギエロン星獣の体液やバラバラになった体のパーツが徐々に集まって復活していく様は、まるでターミネーター2の液体金属を先取りした様な映像でした。 ギエロン星獣との対決のあとの川を羽毛が流れていくシーンも美しかったですね。

セブンとギエロン星獣の対決

 一度は新型ミサイルによる攻撃で粉々になったギエロン星獣ですが、復活後はさらに強くなっており、ウルトラ警備隊の猛攻にもびくともしません。 さらにはR1号から吸収した放射能の灰をまき散らし、このままだと東京が危機に陥るというところでダンがセブンに変身します。 セブンはこの放射能の灰にはビクともしません。 それもそのはず、太陽の近くでエネルギーをチャージするセブンは、強力な放射線を含む大量の宇宙線を全身に浴びてもへっちゃらですから放射能の灰くらいではどうともなりません。

 しかし、ギエロン星獣も強力になっているだけあって、その頑丈な翼や頭部でアイススラッガーをはじき返してしまいます。 さらに両翼の間からリング状の光線を出し、これにはセブンも文字通り手を焼いていました。 撃たれた手を抑えてうずくまるセブン、これはピンチか・・・

と思いきや、天気が良かったので突然勝ちパターンになります(゚д゚)エエエ

 もしかしたら別の意図があるのかもしれないけど自分にはそうとしか読み取れませんでした(笑) しかも宇宙人のセブンだから少しはギエロン星獣に同情するんじゃないのかと思っていたら、太陽を浴びたあとは素手でギエロン星獣の翼をもぎ取り、それをぶん投げてぶつけるという鬼畜の所業に出ます。 おいおい急にどうしたセブン・・・。 その後自分の片翼をぶつけられて倒れ込み、地面で痛みに悶え苦しむギエロン星獣。 これを見たセブンも一瞬動きを止めて今度こそ同情しているのかと思ったら・・・

手に持ったアイスラッガーで倒れ込んだギエロン星獣の首をかっ切りました。

 しかもなんか座頭市の勝新みたいな動きで。 噴き出すギエロン星獣の黄色い血。 返り血を浴びるセブン。 いや、ギエロン星獣の血が黄色いから絵的にはマイルドな感じになってるけど、実際宇宙人による東映実録ヤクザ映画シリーズ状態ですよコレ。 この回のセブンは多分しゃべったら広島弁ですね。 まあそんなこんなでなかなか強烈なバトルシーンでした(;´∀`)

恐ろしく美しい田村奈巳さん

 このエピソードでは東宝出身の女優、田村奈巳さんがゲストとして出演しています。 田村さんといえばウルトラQ第5話『ぺギラが来た!』や初代ウルトラマン第35話『怪獣墓場』に出演していらっしゃいました。 今回の役どころはギエロン星を実験場として選んだ宇宙生物学者です。 このキャラクターは若干マッドサイエンティスト的な側面もあって、『実験が成功すればギエロン星は宇宙から姿を消すでしょう(ニコニコ)』などと美しい顔に満面の笑顔を湛えて、キラキラ光る澄んだ瞳で宙を見つめながら平然と言ってのけます(;´∀`) 抜群に美しいけど怖いって、前野博士・・・汗

 しかし、最後には心変わりしてダンの言葉をかみしめ、人類がそんなマラソンを続けるほど愚かなのかと疑問を投げかけてR2号開発中止へと動きます。 ラストシーンのダンと話すときの美しさと言ったら・・・ε-(´∀`*)

トリビア・小ネタ

  • ギエロン星獣への最初の爆撃の直前のシーンでアマギが『新型ミサイルをホーク2号に取り付けた』と言っているにも関わらず、実際に攻撃しているのはホーク3号。 さらにミサイルと言っているにも関わらず実際には自由落下爆弾が使用されている。
  • 最期のリスのシーンは、もともと台本では『やめるんだ、もうやめるんだ、お前も・・・』とダンが心の中で語り掛ける演出になっていたが、心の声は入れずに視聴者に考えさせる形になった(※1)

出典

※1 小学館『ダンとアンヌとウルトラセブン: ~森次晃嗣・ひし美ゆり子 2人が語る見どころガイド~』P.59より

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